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KENZO、原点へ──髙田賢三の元自邸で2026年秋冬コレクションを発表

  • 1月25日
  • 読了時間: 3分

パリ・バスティーユ地区。かつて髙田賢三が暮らし、創作の時間を重ねた私邸で、KENZOは2026年秋冬コレクションを発表した。ランウェイではなく、住空間そのものを舞台としたこの発表は、ブランドの現在地を示すと同時に、原点への静かな回帰を象徴するものだった。

現在のアーティスティック・ディレクターNIGOが選んだのは、創業者の記憶と美意識が染み込んだ場所。それは単なるオマージュではなく、KENZOというブランドが本来内包してきた多文化性、自由さ、そして個人の暮らしと創造が地続きであるという思想を、改めて問い直す行為でもあった。



「ホームカミング」というコンセプト

今回のコレクションの軸にあるのは、「ホームカミング(帰郷)」という明確なテーマだ。それは懐古ではなく、過去を現在の文脈で再解釈するための視点。NIGOは、髙田賢三が築いたKENZOの精神的基盤──国境やジャンルを軽やかに越える感覚──を、自身のフィルターを通して現代に引き戻している。

静かな邸宅の各部屋に配置されたルックは、生活と服、空間と身体の関係を自然に結びつけ、ファッションが「着るもの」である以前に「生き方の延長」であることを強く印象づけた。



多文化が交差するワードローブ

コレクションでは、ワークウェアやアメリカンカジュアルを想起させるアイテムに、和装を思わせる構造やディテール、ヨーロッパ的なテーラリングの精度が重ね合わされている。その組み合わせは意図的でありながら、どこか自然体だ。

KENZOのアーカイブを象徴するタイガーモチーフや過去のバッグデザインも、新たなスケールや素材感で再構築され、ノスタルジーに留まらない現在進行形の表現として立ち現れる。柄や刺繍、色彩は饒舌でありながら、全体としては過度に主張せず、あくまで「暮らしの中にある服」として成立している点が印象的だ。



空間としてのファッション発表

今回の発表において重要なのは、服そのものだけではない。木の温もりが残る建築、光の入り方、部屋ごとに異なる空気感。それらすべてが、コレクションの一部として機能していた。

ショーという形式を離れ、邸宅全体を「体験の場」として開くことで、KENZOはブランドのルーツを語ると同時に、ファッションの発表方法そのものを再定義している。それは、スピードや話題性から距離を取り、時間をかけて理解される価値を選び取る姿勢とも言えるだろう。



原点から、次の未来へ

髙田賢三の元自邸で発表された2026年秋冬コレクションは、KENZOがどこから来て、どこへ向かおうとしているのかを静かに示している。創業者の精神に立ち返りながらも、そこに留まることはない。その姿勢こそが、KENZOというブランドが持ち続けてきた本質なのかもしれない。

記憶と現在、個人と世界。そのあいだを軽やかに行き交う服たちは、KENZOの次章がすでに始まっていることを、確かに物語っていた。

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